心理学人名事典:ケーラー[Kohler,Wolfgang;1887〜1967]

ヴォルフガング・ケーラー
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ケーラーはどんな人物?

ドイツの心理学者で、エストニアのリヴァルに生まれました。
1909年にベルリン大学のシュトゥンプのもとで学位を取得し、その後類人猿の知能研究をカナリア諸島のテネリフェ島で行っています。彼はウェルトハイマーやコフカとともにゲシュタルト心理学の中心人物ですが、1921年よりベルリン大学教授としてつとめました。しかしナチズムに反対してアメリカに渡り、1935年にはスワスモア大学の教授に就任しています。

ケーラーの業績・理論とは?

1913年〜1920年、スペイン領テネリフェ島では類人猿研究所所長としてヒヨコやチンパンジーに移調の可能性がみられること、チンパンジーが回り道、道具の使用、道具の制作などの洞察などを示す行動をとることを明らかにしました。

学生時代は物理学者ブランクに傾倒したケーラーは、場の理論に精通しており、ゲシュタルト性が心的現象ばかりでなく物理的世界にも存在していることを示しました。1920年には「心理物理的同型説」を展開し、後に「図形残効」などの研究によってそれを支持する証拠を追求しました。

図形残効とは:最新 心理学事典から

図形残効は各種の残効実験の端緒となった視覚現象である。残効after-effectとは,持続する感覚事象に対し感覚系が順応adaptationすると,後続する感覚事象の知覚内容が変化する心理現象である。この現象は,視覚をはじめとする感覚系の隠された処理段階を取り出して解析することができ,メカニズムの解明に役立つと考えられているので,数多くの実験が行なわれてきている。

ケーラーが貢献したこと:1940年「 心理学の力学説 」を刊行

神経生理学の新しい発展を期待して、知覚過程と中枢過程の間の関係を明らかにすることに努めました。上記の「図形残効」はワラックとの共同で行った研究です。

1940年には「 心理学の力学説 」を刊行し、ケーラーは実験学者としても理論学者としてもゲシュタルト理論の成長と成功に大きな足跡を残しました。

文 献

福島 章 編(1996)精神分析の知 88, 新書館.
氏原 寛・山中 康裕 他 編(1999)カウンセリング辞典, ミネルヴァ書房.
中島 義明・子安 増生 他 編(1999)心理学辞典, 有斐閣.
氏原 寛・山中 康裕 他 編(2004)心理臨床大事典 改訂版, 培風館.
下山 晴彦 編(2014)誠信 心理学辞典 [ 新版 ], 誠信書房.
IPSA心理学大学院 予備校(2022)公認心理師試験対策標準テキスト ’22~’23年版, 秀和システム.

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