心理学人名事典:クライン[Klein,Melanie;1882〜1960]

メラニー・クライン
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クラインはどんな人物?

クラインは1882年、ウィーンに生まれ、一時は医師になりたいと思っていた時期があったようですが、結局望みはかなわず、何の学位も取得しない状態で結婚後ブタペストに移りました。また慢性の抑うつ状態の治療のため、1910年からフェレンツィに分析を受け始め、1919年にブタペスト精神分析協会の会員資格を得ています。その後、彼女は1921年に夫と離れて子どもと共にベルリンに移り、S.フロイトの弟子であるアブラハムに教育分析を受け、後にイギリスに移住しています。

クラインはアブラハムの強い支持のもと、子どもの遊びを成人の自由連想と同じようにみて解釈する治療技法を発展させました。その頃、彼女は離婚し、アブラハムの予期せぬ死にも直面してベルリンを離れることになったといいます。

1927年には英国精神分析協会の創立者ジョーンズの保護のもとにロンドンで落ち着き、晩年まで臨床と教育と研究に従事したといいます。

クラインの業績・理論とは?

アンナ・フロイトとの論争

子どもの精神分析的治療をはじめ、遊戯療法の創始者の一人となりました。
しかし児童分析のあり方をめぐっては、A.フロイトとの間に激しい論議を展開したのは有名です。

前エディプス期における子どもの精神分析:原始的な防衛機制の解明に貢献

2歳くらいの幼児でも精神分析が可能であると主張

乳幼児は自分にとって「悪い」対象と「良い」対象からなる空想的・情動的な内的世界の形成があると考えます。この「良い」対象や「悪い」対象と自己との関係は、外的実在との現実的な関係から次第に逸脱して、成人してからも外的実在に対する認知や行動に大きな影響を及ぼすといいます。つまりこれが「神経症」の心的構造であるということです。

妄想-分裂ポジション

乳児は幻想を外界に投影・取り入れしながら、心的生活を営んでいます。例えば「母親の乳房を引き裂く」という幻想を持っているとすれば、それは言葉にできない前言語的な思考で、前象徴的な体験の中で幻想を営んでいると考えます。

抑うつポジション

より成熟した心のあり方で、乳児は「妄想-分裂ポジション」から「抑うつポジション」へと進展するのは生後3〜4ヶ月頃とクラインは考えました。この2つのポジションは生涯を通じて持続する体験組織化様式で、揺れ動きながら過ごすといいます。

投影性同一視

羨望

クラインの対象関係論 では以上のような用語が概念化されています

*「子どもの精神分析」(1920〜1932)
*「抑うつポジション」の研究(1935〜1945)
*「妄想分裂ポジション」の研究(1946〜1956)
*「羨望」の研究(1957〜1960)

文 献

福島 章 編(1996)精神分析の知 88, 新書館.
氏原 寛・山中 康裕 他 編(1999)カウンセリング辞典, ミネルヴァ書房.
中島 義明・子安 増生 他 編(1999)心理学辞典, 有斐閣.
氏原 寛・山中 康裕 他 編(2004)心理臨床大事典 改訂版, 培風館.
下山 晴彦 編(2014)誠信 心理学辞典 [ 新版 ], 誠信書房.
IPSA心理学大学院 予備校(2022)公認心理師試験対策標準テキスト ’22~’23年版, 秀和システム.

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