うつ病が発症する原因について
皆さん、こんな症状はありませんか?
* 一日中気分が落ち込んでいる
* 眠れない、または眠りすぎる
* 食欲がない、または食欲が亢進する
* 何をやっても楽しくない
* 思考力が低下して集中力が続かない
* 自分には価値がないと思ってしまう
* 罪責感・・・・・・などなど
こういった状態が長く続くようであれば、うつ病の可能性があるといわれています。
日本では100人中、3〜7人程度がうつ病を経験しているという調査結果があります。
心因(心的ストレス)として
* 家族や友人との死別
* 人間関係の破綻
* 家庭の不和
* 財産の喪失
* 就職や退職
* 結婚や離婚
* 転勤、引っ越しなど環境の変化・・・など
身体にも要因があります
* 慢性疲労
* 甲状腺機能障害
* 脳血管障害、がん、感染症
* 月経前や出産後
* 更年期などホルモンバランスの変化
* ステロイドや降圧薬の内服・・・など
どんな人がうつ病になりやすい?
うつ病になりやすいタイプの人っているの?
メランコリー新和型性格(Tellenbach,1961年)
- 秩序を重んじる
- 他人に気をつかう
- 頼まれると嫌と言えない
- 真面目
- 正直
- 仕事熱心
- 過度に良心的・小心
- 消極的・保守的
- 頑固
- わがまま(近親者に)
うつ病の診断と治療
神経細胞には分泌された神経伝達物質を再び取り込む部位があって、その部位をブロックして濃度を増やそうとするのが「抗うつ薬」の働きです。この抗うつ薬には、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)があって、脳内のセロトニンやノルアドレナリンの量を増やして、憂鬱な気分をやわらげる治療を行っています。
2008年にアメリカのFDA(米食品医薬局)がうつ病を軽減させる治療装置を承認しました。それは経頭蓋磁気刺激装置(TMS)というもので、日本でも認められるようになってきました。この装置は頭部にあてた磁気コイルを通して脳の左背外側前頭前野に磁気を与えて、脳の活性化をはかるものです。
うつ病の検査とか診断はどうなってるの?
生化学や画像の検査で「うつ病」の診断を確定することはできません。
精神科領域の病気には、ICD-10 や DSM-5 という国際的な基準があって、その内容に沿って診断が行われています。
検査の中には、光トポグラフィ検査(NIRS)というものがあって、(単極性)うつ病、双極性障害、統合失調症の鑑別診断の補助に使われることがあります。
うつ病の質問紙(客観的評価尺度)には、ハミルトンうつ病評価尺度(HAMD)、モンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)、ベックうつ病自己評価尺度(BDI)などがあります。
うつ病の治療は「休養」「薬物療法」「精神療法」の3本柱が基本
うつ病の小精神療法に関する「笠原の7か条」というものがあります
- うつ病は病気であり、単に怠けではないことを認識してもらう
- できる限り休養を取ることが必要
- 抗うつ薬を十分量、十分な期間投与し、欠かさず服用するよう指導する
- 治療にはおよそ3か月かかることを告げる
- 一進一退があることを納得してもらう
- 自殺しないように誓約してもらう
- 治療が終了するまで人生における重大な決定は延期する
認知療法・認知行動療法とその後の経過
うつ病の治療には「認知療法・認知行動療法」もあります。
詳しくは厚生労働省のページをご覧ください。
うつ病の経過について
うつ病の生涯有病率は5〜15%で、女性は男性の約2倍といわれています。
薬物療法で治療した場合は約3か月で改善するということですが、初発のうつ病患者さんの50〜60%は再発すると考えられています。
地域では「産後うつ病」のお母さんに時々出会います。
この病気は産後1〜3か月頃に多く発症するうつ病で、出現頻度は3%程度だと考えられています。どちらかというと初産婦さんに多いのではないかと思います。
育児に対する悩みが次第に深刻になって「母親として失格なんじゃないか」・・といった罪悪感がひどくなると、産後うつ病が心配です。
この事態は母子ともに、とても深刻で辛い状況といえます。
一刻も早く家族や専門職の理解・協力・治療を得て、早期の支援につなげていくことが大切です。
落合慈之 監修(2015)「精神神経疾患ビジュアルブック」学研メディカル秀潤社 P140-179.
大熊輝雄(2015)「現代臨床精神医学 改訂第12版」金原出版株式会社 P370-383.
篠原菊紀 監修(2019)「マンガでわかる脳と心の科学」池田書店 P148-149.
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