エッセイ:春がやってくる前に、雨で過去の思い出も洗い流すと良いかも知れない

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夢の中で整理整頓

夕暮れの校舎はセピア。
高校生になった私は、年老いた同級生達とともにバンドを組んでいる。
何を演奏担当しているのかわからないけれど、今日がバンド活動の千秋楽という事だった。

披露した曲はわからないけれど、撤収作業が早々に完了したらしい。
「あ〜、お別れか・・・」と切なくなって私は目が覚めた。

母が亡くなってからは連日、夢ばかり観ている。
共に過ごした60年近くの年月を振り返り、何とか整理整頓しようとしているのだろう。

夢の中で古ぼけた白黒写真のような会場を後にした。
もう戻ることのない葬儀会場のようにも感じられた。

決して復活・再結成することはないのだと思う。
そして、若き頃の情熱も、怒りも、平穏も、全部過去のものとなる。

本当はバンド活動をもっと続けたかったのかもしれない。
けれど、世代交代は容赦無く、迫ってくるものだ。
これからは凝縮・厳選された楽器だけを身につけて生きていかなくてはならない。

「あ〜、何を残し、何を諦めるのか」思案する。

雨に日が続くように・・・

春の訪れを前にして、日々の寒暖差が痛んだ心と身体を揺さぶる。
雨が降るたびに、思い出のモノとコトを洗い流し手放していく。
清浄な空間で、少しでも早い復帰を目指すものである。

日照時間が平年よりもやや短くなってしまっているのか、傘を持たずにはいられない日々が続く。

母はこの世に対する未練を少しずつ清めていることだろう。
私とは少し性格傾向が違った人だったかもしれないが、万年少女のような幼さが彼女の魅力だったように思う。

ようやく年相応の世界に突入できる時が来たのかもしれない。
私もいずれ認知的機能も徐々に低下して、子どもの頃を思い出しながら若返ってしまうのだろうか・・・
そう考えると、両親を失った今がもっとも「大人っぽい時代」になるのかも知れない。

これが世代交代というものか。

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