今年の夏も昨年以上の猛暑。台風などの災害が日本の各地で大きな爪痕を残しています。今回は「誰しも被災する可能性がある」ということを考慮して災害時の支援体制についてまとめてみました。
被災者の心のケアと支援
被災者の支援について(災害時支援)
台風、震災、紛争などの災害が発生した時は、生命の危険から逃れることやライフラインの復旧が何よりも優先されます。例えばガレキの撤去などの作業は最低限度の生活を送るために必ず行わなければならない支援です。
被災直後は被災者の心に不安が生じたり、眠れなくなったりすることがあります(過覚醒状態による不眠)。これらは病的な反応ではありませんが、成人よりも子どもの方がリスクが高いため、留意しながらケアを実施する必要性があります。
災害のあとのメンタルケアについて
PTSDとは?
心的外傷後ストレス障害(PTSD:post-traumatic stress disorder)のことで
- 大きな事件や事故などにより極度の心的外傷を受けた被災者に起こるストレス障害
- 多くは事件後6か月以内に発症する
- 3か月以内の発症を急性、3か月以後を慢性型という
できるだけ早い時期に援助者が被災者に接触して、心理的に不安定な人の支援を行うことが重要です。
災害初期の心理的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド)を実施
心理支援者としてどう関わるべきかについてはアメリカ国立PTSDセンターと、アメリカ国立子どもトラウマティックストレス・ネットワークによって開発されたマニュアルがあります。
日本語翻訳版は兵庫県こころのケアセンターによって作成されています。
マニュアルはこちら
https://www.j-hits.org/_files/00106535/pfa_text.pdf
災害派遣精神医療チーム(DPAT:Disaster Psychiatric Assistance Team)
大規模な災害や大事故が発生した時は、多くの負傷者を救助することが重要です。
そのような時に派遣されるのが、災害派遣医療チーム(DMAT:Disaster Medical Assistance Team)で、DPATはこのチームをモデルにして創設されました。
DPATは自治体によって組織され、国立精神・神経医療研究センターにある「災害時こころのケア情報センター事業」による研修を受けた精神科医や看護師を含めた2〜5名で構成されています。
DPATの災害活動における3原則
Support:名脇役であれ。
主役は被災地の支援者であり、地域の支援者を支えるための活動を行う。
Share:積極的な情報共有。
災害対策本部や担当者、地域の支援者、その他の医療チームとの情報共有や連携を積極的に行う。
Self-sufficiency:自己完結型の活動。
被災地域の負担にならないよう自立した活動を行い、自らの健康管理・安全管理は自ら行う。
支援者に対するケア
組織的取り組み(心理師として)
- 役割分担と業務ローテーションの明確化
- 支援者のストレスについて教育
- 住民の心理的反応について啓発
- 支援者の心身のチェックと相談体制
- 業務の価値付け
個人的取り組み
- 仲間同士の協力
- 仲間とのコミュニケーション
- 仕事にメリハリ
災害後の生活支援とともに心理的なケアが早期に実施されるということが重要です。防災とともに各地域や都道府県、国の体制について知っておくということは必要だと思います。
医療情報研究所 編(2022)「公衆衛生がみえる 2022-2023」メディックメディア P146-149 .
IPSA心理学大学院予備校(2022)「公認心理師試験対策標準テキスト’22〜’23年版」秀和システム P297-300 .
荒井 直子 他 編(2022)「公衆衛生看護学.jp 第5版 データ更新版」インターメディカル P431-450.
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